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南部町への移住者、田中ファミリーからのメッセージ

ページID:0004472 更新日:2024年3月21日更新 印刷ページ表示

移住者メッセージ

自分らしい働き方を求め地元で就農  作物も子ども家族も育つ豊かな土壌

 

田中さん家族の写真

田中 広大(たなか こうだい)さん/1991年生まれ、青森県三戸郡南部町出身。実家は主に果樹栽培を手掛ける農家。鳥取大学地域学部在学中にゲストハウスの開業、運営に住人として携わり、卒業後は小売業の営業職を経験する。2019年3月、家族とともに南部町にUターンし就農。

 

田中 綾乃(たなか あやの)さん/1991年生まれ、兵庫県神戸市出身。鳥取大学地域学部在学中の2013年、広大さんと結婚。長女を出産後に復学し卒業。2019年、長女、長男とともに夫の地元である南部町にIターン。2021年12月に次男が誕生し3児の母に。

 

南部町から約1,300km離れた鳥取県で出会い、ともに地域の課題解決について学んだ田中広大さん、綾乃さん夫婦。祖父の代から続く農業に新たな可能性を見出した広大さんは、家族とともに地元・南部町に戻る決断をしました。地元で就農&起業した広大さんと、Iターンで子育てに奮闘する綾乃さん。二人の目に映る南部町とは?

地域コミュニティと暖かな絆で結ばれた鳥取の日々

田中さん夫婦の写真

田中広大さんの鳥取大学時代の住まいは、シェアハウス。カフェやゲストハウスも併設し、地域住民・旅行者・移住者の交流の場でした。

ハウスの改修や運営のサポートにも携わった広大さんは、在学中の23歳のとき同級生の綾乃さんと結婚。長女が誕生します。二人とも故郷を離れて進学し、学生結婚に初めての子育てにと、苦労がなかったわけではありません。しかし、ともに地域学部に籍を置き、積極的に関わってきたこともあり、地域コミュニティが大きな支えになりました。

 

「結婚が決まったときは、『子育てできる空き家を探せ!』って、ご近所のおばちゃんたちが家探しに動いてくれたんです」と広大さんが言えば、「家電も家具もご近所さんが持ってきてくれて、ほとんど何も買わずに引っ越したよね。『あそこの家で冷蔵庫が要らなくなったらしい』とか、ネットワークがすごかった」と綾乃さんも笑顔で振り返ります。

 

アートを通じた地域活性化を学ぶ綾乃さんは、結婚、出産を経て復学。長女が発熱したときは近所の人に預かってもらうなど地域温かな絆に支えられながら大学に通い、卒業を迎えます。同じ頃、広大さんはUターンの夢を暖めていました。

 

空き家バンクで住まいを探し、祖父・孫・ひ孫でDIY

おじいさんと孫の写真

 「サラリーマンとして働いてみて、自分の裁量で働く方が性に合っていると感じて。何の事業をしようか?と考えて出てきたのが“地元で農業”です」と広大さん。実家は代々専業農家。両親はさくらんぼやりんごなど、南部町の特産品である果樹を栽培しています。

「ノウハウを持った大先輩が身近にいる。機材などの投資も最小限に抑えられる。この恵まれた環境、強みを活用しない手はないと思いました」

 

長男が生まれ、4人家族となった一家が南部町に移り住んだのは2019年春。綾乃さんも背中を押し順調に進むかと思われた移住でしたが、思わぬ問題が。インターネット上に町の賃貸物件情報がほとんどなかったことです。

そこで田中さん一家は、転入前、町が移住検討者に無料で貸し出している『おためし住宅』に滞在。南部町運営の空き家バンクを活用して一軒家を借りることができました。入居前にはDIYでプチリフォーム。大工だった広大さんの祖父に協力してもらい、田中家の子どもたちも手伝って、快適な住まいを作り上げました。

 

夫婦と親子、就農で生まれたいい関係

農業作業の写真

移住1年目は営農大学校(七戸町)で講習を受けながら、八戸市内の農家で修行。広大さんが独立したのは、翌2020年春のことです。現在はビニールハウスでミニトマトと寒じめほうれんそうを栽培。栽培品目や面積は、収益性を考えて決めました。出荷先は農協に絞っていますが、将来的には販路拡大も見据えています。

 

「自然相手ですし思うようにならないこともありますが、経営という点では農業も他業種と一緒。トマトでいうと、化学肥料を入れ続けると土壌のバランスが崩れて病気のリスクが生じる。コストをかけてでも有機肥料にした方が長期的にはプラスになる…そんな風に、どこに投資して何を売りにするかを考えていますね」

実家近くに畑を借り、農家一筋の父には技術面でさまざまなことを教わっていますが、逆に広大さんが経営のアドバイスを求められる場面もあるとか。お互いの得意分野を持ち寄って支え合う、いい関係が続いています。

 

ライフスタイルも、サラリーマン時代とは大きく変わりました。

「時間に自由が利くのが自営業のいいところ。平日でも自分の判断で外食や買い物に行けるので混雑を避けられて、ストレスが減りましたね」と話す広大さんに、綾乃さんも「勤めているときよりもいい顔で働いてるなって思います。夫婦間のコミュニケーションも取りやすくなりました」と続きました。

豊かな食文化を満喫する子育て

トマトの写真

綾乃さんの語る子育ての様子には、南部町らしさがあふれています。たとえば長女の幼稚園では、さくらんぼにりんご、ぶどうなど、季節ごとにさまざまなフルーツ狩りに行くのが恒例だったとか。

「掲示板に『〇〇組の〇〇ちゃんのおばあちゃんの畑に行きます』とか書いてあって。子どもたちが、食べものがどこから来るか自然に学べるのがいいですね」 

また幼稚園に“フリー野菜コーナー”もあったそうで、「園児のお家の方、ご近所の方も農家が多いから野菜をもらうみたい。先生がスティック状にカットして味噌マヨと一緒に置いておくと、子どもたちが食べるという感じで。保護者向けには野菜や果物が『ご自由にどうぞ』って置いてあったり」 

 

南部町は山間地の寒暖差が甘い果物を育み、“北のフルーツ王国”とも呼ばれます。旬の食材が豊富に揃う環境が「決して当たり前じゃなく、ありがたいことだっていうのも子どもたちに伝えたい」と綾乃さん。風土への感謝は、やがてふるさとに対する誇りにつながると感じています。

楽しむ気持ちが受け継がれる祭りと芸能の郷で、描く未来

赤ちゃんの写真

南部町では毎年2月に舞により冬の間眠っていた大地の神を起こし、春の訪れを告げる郷土芸能「南部地方えんぶり」が行われます。コロナ禍直前に観たえんぶりに、綾乃さんは心を動かされました。

「子供たちが生き生きとやっている姿が印象的でした。口上も声を張って、堂々としていて、“やらされている”感じがない。これは大人が無理に教え込まず、まず自分たちが夢中になる姿を見せているからじゃないかな。踊りやお囃子だけじゃなく、楽しむ気持ちが受け継がれているって、素敵ですよね」

えんぶりを皮切りに、5月「南部町春まつり」、7月「ジャックドまつり」、8月「南部まつり」、9月「名川秋まつり」、「とまべちまつり」など、季節ごとに多彩な祭りや行事が楽しめるのも南部町の魅力の一つ。「南部手踊り」をはじめ舞や神楽などの芸能が祭りを彩ります。

 

「南部町がすごいのは、実は技を持っている人が多いところ。ふつうのおじいちゃん、おばあちゃんがお囃子や踊りをしたり、着付けや髪結いができたり。郷土芸能がさかんだからできることで、あと20年もしたら減ってしまうかもしれない」と複雑な表情の広大さんに、綾乃さんが「それまでには私が着付けを覚えるよ」と応えます。

 

今後のことを尋ねると、「まだ具体的に言える段階ではないですけど…」と綾乃さん。

「彼は農業を深めていくし、私は私で、大学まで学んできたことを生かして地域でできることを考えています。完全に仕事モードになるまでにはまだ少し時間がかかりそうですが、逆に、この子に考える時間をもらえたと思ってます」

視線の先には、生後2か月の次男がいました。